久しぶりの浅草演芸ホール。
何ヶ月ぶりか・・・?浅草の照明が、新鮮でとても気持ち良かった。
お客様は少ない。
なんなら私が出ている夜の部は、我々出方の人数より少ない…。
けど、とても良い雰囲気で、すごく前向きになれました。
普段地方暮らしをしていると、ニュースやワイドショーに映る東京しか
見ていないので、二ヶ月ぶりの東京は正直怖かった。コロナウィルスの
見えない霧に包まれているのでは??そこに飛び込むのは命知らずだ…
くらいに思えて来るインパクトがありました。
でも、地方の皆さま…警戒は必要ですが、
どうか差別はしないでくださいね。
私は大反省しました。
なんとかやって行こうと、心構えをしっかり持って、念には念をと、
出来うる限りの心を尽くして日々暮らしている方ばかりなのです。
一部の心ない行動に目が行きやすいのですが、どうかどうか、
テレビでは映せていない人々にもぜひ心をお寄せください。
二ヶ月ぶりの東京。「優しい笑顔」が増えていると感じました。
なぜ、優しい笑顔が増えているのか?
それは、日々耐えているからでしょう。
何かのせいにしたり、文句を言って悪相を放っているうちは、
逃げ道に頼っている証拠ですが、本当に辛い時、もう道がない
と思えば、決意をし、笑顔で乗り切ろうとするものです。
なんとか乗り越えようとする時、準備をし、気持ちを整える
作業を日々重ねて行くことで、お互いに馴れ合いがなくなる…。
すると「ありがとう」「お陰さま」の気持ちが自然に宿って
来るのだと思います。
電車に乗っても、お茶をしても、車掌さん、店員さんの対応が優しい。
「間違いを起こさないように」と一つ一つ気をつけているのが分かります。
寄席でもそれは同じ。
木戸番のお兄さんの笑顔の挨拶には、「この中をよくぞお越し
下さいました」という思いやりが滲みでています。入り口で検温
を受け、無事を確認して楽屋へ行くと、マスク姿の前座さんが
「先生おカバンを」と、心からの思いやりで手を貸してくれる。
…この子たちはきっと、脇の仕事(先輩達の地方興行などのお手伝い)
がなくなり、寄席での修行も減り(楽屋が密にならないよう人数を
制限している)、不安だらけなんだろうな…今自分が出来ることを、
マスク・手指洗い・アルコール消毒などの対策を徹底しながら、
一所懸命に勤めてくれているのだな、と胸が熱くなりました。
出演者同士も、目で会釈したり、ジェスチャーで「元気?」
「またね〜」と挨拶したり、「通りますよ」と手刀切ってピョコピョコ
お辞儀をしながら舞台裏廊下を通ったり…
ペチャクチャ話ができない分、江戸仕草の究極形を実行しながら(笑)、
なんだか泣けてきました。
前座の神田松麻呂くんに「あんた大丈夫?元気だった?」と声を
かけると「はい、元気です!!前座の僕たちから何かあっちゃいけ
ませんから!絶対に無事でいなくては洒落になりませんから!」と
マスク越しにキラキラした目を覗かせました。
ハァ〜この子も苦労しているな〜と。
でも、芸人にとってこの苦労は宝です。今の前座さん達の笑顔は深い。
お席亭にも感謝しかありません。芸人から高座がなくなったら、
いろんな意味で終わりです。やはりどんな時でも続けてこその、
あの、空気感なのだと思うから。採算度外視で…本当にありがたい。
もし心が疲れたと思ったら、密を避けながら、
ふらりとぜひ、今の寄席にいらしてくださいね。
とても良いです。
※ちなみに移動中、都内では、電車が混んでいて怖いと思えば、
一旦ホームに降り、1、2本逃せば、空き空きの電車がちゃん
と来ます。急がないスケジュールをたて、ゆったりした気持ち
でお運びくださいね。また、大通りや観光地のメインロードは
人とすれ違いますが、少し路地を入れば全く人とすれ違わずに
目的地に到着することができます。